「好き。」

寂しがりやの恋



今日だ、と思った。





少し前から、
今度こそ、
最後に、
彼に会いに行こう、と思っていた。







………………あれ?




この記事で、


1年間の片思い、
終わりにするって言ってたやん。


もう会いに行かないと決めたとか、
言うてましたやん。




うん。





でもね、
会いに行きたくなっちゃったんだよね。笑




いや、むしろ、
恋する乙女の、
もう会いに行かないが、
当てになったためしが、
この世において、あると思います?
(この世の全乙女を巻き込みながら)




あと、大事なことを忘れてた。


私、一度愛した人のことを、
そんな簡単に終わりにできる女じゃなかった。



というわけで、
私がもう一度、彼に会いに行こうと思った理由から、
会いに行って、
今、感じていることまで。



ものすごく長くなったので、2回に分けました。笑




ひとつひとつの感情が、
すごく大切で、忘れたくないから、
自分のために、
残しておきます。




*****






7月の終わり。
長い梅雨が明けない曇り空の日。




「愛ちゃんはな、本当に言いたかったことが何一つ言えてないよな」



「嫌われたくないから、正しいことしか、言えなかったよな」




カウンセリングで、
ジュンコさんに言われて、
そのとおり、と思った。



でも、正しいことを言うときって、
本人に、正しいことを言ってる
自覚はないんだな、と実感した。



「私との時間を大切にしてくれないのなら、もう会いにはいけません」

そんな気持ちを伝えて、
終わっていた彼とのやりとり。


私、勇気を出して、
言いたいことを言った、
本当の気持ちを言った、と思ってた。


でも、
ああ、私は、
頭で言いたいことを言っただけだったんだな、
と思った。



私は、彼に、
自分の本当に言いたかったことは言わずに、
正しさで、彼を切った。
こうあるべき、で、自分の愛を切った。


それは、きっと、必要な痛みだと思った。
繋げている痛みと、切る痛みを天秤にかけて、
私は、切る痛みを選んだ。




「彼は、愛ちゃんにとって、自分なんやろうな。

どこか浮世離れして、
本当の自分は誰にもわかってもらえなくて、
夢はたくさん語るけど、
本当のところは決してみせてくれない。

そのまんまやん。」




そうだった。

あなたは、寂しい私、そのものだった。


あなたを見てたら、
私、自分を見てるみたいで、
どうにかしたくて、
でも、決して近づかせてもらえない。


近づかせてもらえないのか、
私が近づかないようにしているのか、
近づくことのできない距離にいる相手だからこそ
あなたに惹かれてしまうのか、
全部がごちゃごちゃになって、
切り分けるにはあまりに似ていて、


私は、
あなたの寂しさが
あなたの孤独が、
あなたの強さが、
あなたの儚さが、
あなたの優しさが、
あなたの繊細さが、
人ごとには思えなくて、
ほっとけなくて、


出会った夜の酔いから目が覚めたとき、
私の目の前には、
愛する、という選択肢しか無かった。


あなたを愛することが、当然みたいに、
それでいて、
私を今とは違う世界に
連れていってくれるかもしれない
という期待で溢れて、
キラキラと輝いて見えた。


自分と同じ感覚の人と出会えた喜びは、
私を強くしたし、
支えてくれた。


だけど、
自分を見ているような恋は、
どうしても苦しさがぬぐえなかった。

自分の心の穴が痛むから。

でも、心の穴が痛むからこそ、
そこから離れることができなかった。

あなたの心も、痛いんじゃないかと思うから。




言葉で言わなくても、
伝わるものがある気がした。

ふたりの言葉で話せる気がした。

私だけは、
わかってあげられるような気がしたのは、
私の願望だったかもしれないけど、
あなたにとって、
私だけは、という、特別な存在になりたかった。


あなたがずっと欲しかったものと、
私がずっと欲しかったものは、
きっと一緒なのかもしれないって、
あなたが抱えている寂しさと、
私の欠けている心の形は、
きっと似ている気がした。

私の勘違いでも、
ひとりよがりでも、
私があなたのそばにいることで、
ひとりじゃないと思ってほしかった。



でも、きっと、
私が感じていたのは、
あなたの、じゃなくて、
私の孤独で、
私の「助けて」だったんだと思う。

ずっと寂しくて、
ずっと叫んでいたのは、
私だったんだと思う。





*****




8月のはじめ。
やっと、夏がきた、と思うような日差しの中で、
2日連続で、
自分の心が開いていくような感覚を味わった。


みさほさんのイベントに参加していた私は、
森林さんのある言葉が、
突然、矢みたいに心に刺さった。


森林さんが、
「愛は、相手のありのままを受け入れること。
ありのままを受け入れられずに、
相手を変えようとするのは、コントロール。」
という言葉を言ったとき。


これまでも、
少しずつ形は違えど、
いろんな人から、何度も聞いてるはずのその言葉。


だけど、初めて、
私の心は、その言葉を、受け入れた。

私、
彼を愛せてはいなかったのかもしれない、
と、私の中で、認められた瞬間だった。



私が望んでいたのは、
彼に変わってもらうことで、
彼ができないことをしてもらうことで、

この、心に穴が空いたままの寂しさを、
埋めるために、
彼の愛を求めてきたんだ。

彼が何か変わらないと、
私のこの寂しさは、満たされない、と思ってた。
だから、終わりにした。

彼が私のために何かを変えてくれることはないし、
それを望むことはできないから、
終わりにするしかなかった。


私は、私の心の穴を見ようとはせずに、
ありのままの彼を受け入れることもできずに、
変えたくて、変えたくて、
必死だったんだな、と思った。

そんな自分を責めるわけでもなく、
後悔するわけでもなく、
ただ、そう思った。




*****



その翌日、ジュンコさんの講座で、
私は涙が止まらなかった。



ジュンコさんの言葉の一つ一つと、
伝えてくれるあたたかい感覚が、
私の心の穴をじんわり包んで、
染みて、染みて、
どうしようもなく涙が止まらなかった。


私のど真ん中が開いていて、
そこに、言葉も、感情も、景色も、風も、音も、
全部が、何の抵抗も受けずに、
真っすぐに届いた。

初めて、自分の心に空いている穴の形に、
自分で触れることができたような気がした。


そこは
とても冷たくて、深くて、暗くて、悲しくて、寂しい場所だと思ってきたけど、

そこで流す涙は、
なぜか、理由もわからないくらい、
とてもあたたかくて、
そこで感じる風は、
とても心地よくて、
その穴に触れた後に見る街並みは、
いつもと変わらない景色でも、
透き通って見えた。


いつも、頭で生きて、
頭で感じて、
頭で理解しようとしていたんだっていうのが
ありありとわかるくらい、
言葉にならなかった。
ただ、泣いていた。

心が泣いてることだけは、わかった。

この穴こそが、私なんだと。
この穴も含めて、私なんだと。
穴が空いていても、それでいいんだと。

ありのままでいられることの安心感は、
ただそこにいるだけで幸せと感じられるような、
これまで私の心に溜まっていた
どす黒い感情さえ全部忘れてしまうような、
やさしいやさしい感覚だった。





その感覚を忘れたくなくて、
少しずつ日常に戻って薄れていくその感覚が
名残惜しくて、
毎晩、手繰り寄せては、
自分の心と対話していた。



私の心は、
彼に会いたい、と言った。


ありのままの私で、
もう一度、彼に会いたい、と言った。



私が、あなたに、
本当に言いたかったことは何だっただろう。


頭じゃなくて、心で言いたかったことは、
私の心がずっと感じていたことは、
何だっただろう。








好き。









ただ、それだけ。





嫌われないように、
理解してもらえるように、
いろんな言葉をくっつけて、
伝えてきた私の気持ち。


彼の前で見せてた私は、
ありのままとは、いつも、ほど遠かったこと。

本当の気持ちは、いつも出さずに、
飲み込んできたこと。

これまで伝えてきた気持ちは、
ほとんどいつも頭で考えて、話していたこと。

大好きだった人に、
今もこんなに大好きな人に、
いちばん言いたいことが言えなかったこと。


そんなことが、
ありありと
浮かんできて、
どうしたい?って、
私の心に聞いた。


できるなら、もう一度、
ありのままの私で、
本当に言いたかったことを、
伝えに行きたい、と、言った。






「好き。」




彼に伝えるのを想像するだけで、
なんだか泣けた。






*****




だけど。



ありのままの自分というものに、
はっと目が覚めて、
その自分で生きたいと思い始めたからこそ、


本当の自分よりも、
ものすごく着飾って200%で会いに行くことに、
エネルギーが必要で、
その気合いがなかなか入らなくて、
なかなか、
行く、という線を、飛び越えられずにいた。


外見的にも、内面的にも、
綺麗に見せたくて、
一生懸命作りあげた私じゃなくて、
ありのままのわたしで、恋愛する。

そのことが、これからの私が、
ほんとうに望んでいることなのかもしれないと、
初めて、気が付いた。


いつまでも理想の自分を、
理想の恋を追いかけ続けて生きていくことが
私の生き方で、
私の本望だと思っていたけど、
自分のことを許せないまま、
受け入れられないまま、
そうやって生きていくのは、
今の自分じゃ愛されないを繰り返して
生きていくのは、
もう、苦しいと思った。


そのままで、
愛したり、愛されたり、してみたいと思った。
もう、してもいいと、思った。

好きという、本当の気持ちを、
あなたに伝えに行くことが、
私にとっては、その一歩目になるような気がした。



そんなことを考えながら
何日か過ごした。


そして、その日がやってきた。


夜、眠る前、すごく心が熱くなって、
あなたに会いに行きたいと思った。


これまでの、
行きたいけど、行かなくてもいい、
そんな気持ちだった私の中のぼんやりが、
なにがどうなっても、会いに行く、
そんなぐつぐつしたものに変わっていた。


そして、朝、目覚めても、
この気持ちが変わらなかったら、
彼に連絡しようと決めた。


目覚めて、今日だ、と、思った。



彼に連絡して、会いに行く約束をした。





*****




鏡に映る化粧をした自分の姿を見ながら、
もう、この私で会いに行くのは、
本当に最後かもしれない、と思った。


こういう風に化粧をして、
髪を巻いて、
ワンピースを着て、
ハイヒールを履いて、
一番綺麗な私で会いに行く。

化粧をした自分の顔なら、
髪を巻いて、それなりの服を来て、
綺麗と言ってもらえる自分のことなら、
好きになれた。

その私を、
誰よりもあなたに見てほしかった。
あなたにも、綺麗と言ってほしかった。
あなたに、好きになってほしかった。



だけど、私は、
足りないと思ってるところを、
必死に必死に埋めていたんだよ。
でも、どれだけ、
埋めよう埋めようとしても、
埋まらなかった。


足りないと責められて
傷ついてるボロボロの私は、
こんな私を見せるわけにはいかないからと、
家に置いてかれたまま、
綺麗にした私だけで会いに行くような、
そんな一人芝居を、
ずっとしていたような気がした。


本当に、彼に会いたかったのは、
本当に、彼に惹かれていたのは、
本当に、彼を必要としていたのは、
本当に、彼に愛されたかったのは、
そっちの、私だったのにね。


そんなことにも気づかないまま、
あなたに会いに行くには、
綺麗な私になることが必要だと思ってた。
そうしないと、
あなたの目には、映らないような気がしてた。


でも、
私がこれから、本当に大事にしたいものは、
一番綺麗にして会いに行く、
その先には、ないんだと、
綺麗な自分しか見せられない、
その先には、ないんだと、
気付いてしまった。




思いっきり綺麗にして、
背伸びして、
その夜のために、すべて懸けて、
一緒にいる一瞬の時間に燃え上がって、
帰ってくる時には、
幸せだった分だけ、寂しくて、虚しくなる。

そんなふうに、
好きな人に会いに行くようなことは、
私が今まで
恋愛の醍醐味だと思っていた、
瞬間的にかき立てられる情熱やときめきや衝動や、
そのあとに訪れる
どうしようもないほどの欠乏感は、
もう、私の心が本当に望んでいることじゃないのかもしれない。



そんな気がした。



私は、こういう風に恋をすることは、
きっと、もう、望んでいなくて、
綺麗な私だけを愛してもらおうと
しがみつくことは、
きっと、もう、
心の底から頑張ることはできなくて、

その裏にいるありのままの私と一緒に、
過ごしていけることを、
幸せを感じられることを、
望み始めたんだと、わかった。



だから、今日は、
足りない私も、
寂しい私も、
一緒に連れて行こう。


そう思って、
家を出た。










*****





次回につづきます。

思いが溢れすぎて、
つらつらと書いてたら、
会いに行かずに前編が終わるという。笑



***

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