この鉛があるから、こんなにもあなたを愛せるなら

私の愛し方


私の心には、”寂しさ”という鉛が埋まっている。


いつもはそんなことは忘れている。
まるで、そんなものは存在しないかのように、
穏やかな顔をして、
誰かを受け入れようとする。

だけど。

好きな人から連絡がこないとき。
好きな人と会えなくなったとき。
約束が叶わなかったとき。

私を受け入れてもらえないと感じるとき。
私なんか、いらないんだって思うとき。
私なんか、いてもいなくても同じなんだ、と思うとき。
私のことなんて、どうでもいいんでしょう?と思うとき。


どうせ、愛されない、と思うとき。


心がある場所が、
ずしんと重くなって、
がちがちに硬くなって、
そこだけ血が通わないみたいに、冷たく冷たくなる。


それは、まるで、鉛みたいに。


そして、涙が出てくる。
出てくるときはまだいい方で、
さらに硬くなったら、
瞳の奥で引き返して、鉛の一部になって、
簡単には出てこれなくなる。

そして、息ができなくなったように、
苦しくなる。


私は、
それが、すごく怖い。

自分の心が、そんな風に
変わってしまうこと。

誰かを平気で傷つけようとするくらい、
自分が痛くて痛くてたまらないこと。

その痛みを、どうか、わかってほしくて、
愛する人に投げてしまいたくなる。

でも、それをして、
壊した恋が何個もある。

だから、
この鉛を投げてしまったら、
愛する人の心を、
二人の関係を、壊してしまうかもしれない、と思う。

こんなもの、投げてしまったら、
それを受け止めてくれる人なんていなくて、
それを許してくれる人なんていなくて、
逃げられてしまうと思う。

もしも、受け取ってもらえても、
愛する人の心を、潰してしまうかもしれない、
と思う。

一度や二度、受け取ってくれたって、
ずっとは受け取ってくれないでしょう?と思う。
いつか、あなたも、潰れて、嫌になって、
私を置いていくでしょう?と、思う。

これまで、
私を好きだと言った人が、
そうしたように。


だけど、私の手で潰してしまうくらいなら、
いっそ、早々に、逃げてくれたほうが
いいのかもしれない。

本当は、そう思う私も、いたのかもしれない。

だから、あの時、私は自分の恋人を、
私を好きだと言ってくれた人を、
追わなかったのかもしれない。

そして、
「やっぱり、そうなるよね」と、
心のどこかでほっとした自分が
いたのかもしれない。

これ以上近づく前に、
これ以上傷つける前に、
離れたほうが、私も、あなたも、きっと、楽になれるから。

だから、あの日の私は、泣かなかったんだろう。







心が鉛になるとき、
こんなに寂しければ、
どうにもこうにも、生きてなんかいけない、
と思う。

ああ、これさえなければ、
私の心に埋め込まれているこの鉛さえなければ、
私はもっと、息がしやすくなるのに。

愛する人を傷つけたり、
自分を傷つけたり、
しなくてすむのに、と思う。

これのせいで、
恋を壊してきたと思っているし、

これのせいで、
死ぬほど苦しいし、

これのせいで、
人間らしい普通の日常を送れなくなる。

これのせいで、
私は、
穏やかで、優しくて、にこにこ笑っている、
いつもの私を、見失う。


だから、私は、
この鉛を、
手放したい、という衝動に、
定期的にかられる。


そして、そんな鉛を抱えながら、
その衝動をひとつひとつ乗り越えながら、
今の彼を愛するのは、尋常じゃなく、寂しかった。
寂しくて、寂しくて、死にそうだった。

それはもう、私の心が、
めずらしく、
もう、疲れた、
とつぶやくくらいに。






「彼のことは、もういいかなって思うんです」


ジュンコさんのカウンセリングを受けながら、伝えていた。

私は、間違いなく、
誰かを愛することを望んでいる。

でも、今の彼を
愛することには、疲れてしまった。

限界だなあ、と思った自分がいた。

でも、同時に、
諦めなくて済む希望も探していたのかもしれない。

だから、ジュンコさんに、
この数ヶ月のことを、
彼を思って過ごした私のことを、
二人で過ごした短い時間のことを、
少しだって漏らさないように、伝える。

そして、それだけで、
カウンセリングの時間を半分使い切る。笑


自分の鉛が抱えきれず、
こんなに寂しくて、
こんなに苦しくて、
私がかわいそうだな、と、思うようになって。

だから、この恋は終わりにしたい、
そう言う私に、

ジュンコさんは、
私をかわいそう、と思う自分と、
彼を愛そうと頑張った自分がいるやろ。

かわいそうと思う自分が、
頑張った自分のことを、
せめたらあかんねん、
と言った。


あの瞬間は、
上手く受け取れなかった言葉を、
今、ひとつひとつ整理する。

私が、こんなにかわいそうになるまで
頑張ったのは、
好きだったから。

好きだったから、我慢した。

だけど、寂しい。
いつもいつも、寂しくて、仕方なかった。

でも、これをぶつけてしまったら、
彼を傷つけて、彼に嫌われてしまう。

そう思ったから、我慢した。

上手な愛し方ではない。
幸せな恋でもないのかもしれない。

誰がみても、
そんなの大事にされてないよ、と、言うのかもしれない。

けど、好きで、好きで、
どうしようもなく、好きだった。

だから、
今の私にできる、精いっぱいの愛し方。

それは、本当に、
かわいそうなことだったのかな。

頑張った私を、
かわいそうな私、にしているのは、
愛されたかった私。

だけどね。

誰が、かわいそうと言っても、
痛いと思ったとしても、
必死に愛したくて、頑張った私は、
健気で一生懸命な、私。

それが、かわいそうなわけないんだ。

彼を愛することが幸せで、
彼の愛を手に入れられたらもっと幸せで、
その幸せのために、頑張った、私。
私のために、頑張ってくれた私。

それは、
かわいそうな女の子なんかじゃなくて、
勇者の姿。

すごく、かっこいいじゃん。
愛されたいと願う、私のために頑張ってくれて、
本当にありがとう。



私は、いつも、我慢をしてた。

いつも、私は大丈夫、と、
彼の前で笑っていたし、
寂しくて大丈夫じゃない姿を、
ずっと隠してきた。

少しづつ本音を伝えるようにして、
でも、数十年の人生で染みついてしまったクセはなかなか抜けなくて。

そして、もう、踏ん張れなくて、
爆発した私に、

愛ちゃんを苦しめるのは、
その、愛ちゃんのつく嘘や、と、ジュンコさんは言う。

愛ちゃんは、本当は大丈夫じゃないやろ?
やけど、大丈夫、私は大丈夫っていう。
そういう嘘をつくのが上手いねん。

本音は、私だけを見てよ!私を優先してよ!やろ?


私の本音。


寂しい。

寂しくて、悲しくて、苦しい。

私ばっかり、好きみたいで、ばかみたい。

私ばっかり、こんなに好きで、本当にばかみたい。

すごく、惨めで、
虚しい。


私を、一番に、見てよ。

私を、誰よりも、何よりも、優先してよ。

私を、誰よりも、好きになってよ。


あなたが、大好きだから。


私は、あなたに、
これが言いたかった。

いちばん、言いたかった。

だけど、あなたに、
言えなかった。

いちばん、言えなかった。


会いたいよ。
会いたかったよ。
会えて嬉しかったよ。
一緒にいると幸せだよ。

いつも味方でいるよ。
癒しになりたいよ。
あなたのことをもっともっと知りたいよ。
特別な人だと思っているよ。
頑張ってるあなたが素敵だよ。
あなたの信念を見続けるよ。

たくさん伝えた。
好き、以外の言葉で、
思いつくものは全部、全部、伝えた。

私の持ちうる語彙力をすべて使って、
あなたに伝えたつもりだった。

愛の言う事なら、なんでも真正面から受け取るよ、
と言ってくれた彼は、
もしかすると、受け取りすぎて、
グローブがすり減ってしまったのかな。

痛かったかな。

もう、痛くて、受け取るの、
嫌になっちゃったのかな。

でも、
いちばん、言いたかったことは、
何よりも、言えてなかったんだよ、私。
これでも。笑


あなたと出会う前の私なら、
どうせ終わりにするのなら、後悔ないように、やりきろう。
そう思って、言いたかったこと、
最後に伝えていたと思う。

でも、今の私は、
それすらせずに、そっとしておこう、と思ってる。

それは、すごいことやで、と、
ジュンコさんは言った。

最初は、その意味がわからなかった。

だって、自分の気持ちを伝えずに終わるなんて、
アスリート失格だと思うから。

でも、今は、
なんとなくわかったような気がする。

休むことを知らずに、
追うか、終わるか、しかなかった私が、
立ち止まる=死で、
どうせ最後なら、
思い残さずすべてをぶちまけて有終の美を飾るのが当然、
と思ってきた私が、
何も言わずに、立ち止まろうとしている。

それは、たしかに、
ものすごいことなのかもしれない。

最後だと思うから、全部ぶちまけよう、とする。

彼に対するこの鉛を手放すために、
きれいさっぱり、
洗い流そうとする。

それって、
私が勝手に、最後にしようとしてるだけ。

自分から、最後にしなくてもいい。
勝手に区切りをつけなくてもいい。
強がらずに、繋がっていてもいい。
また、会いたくなったら、会いにいける。
さよならさえ、言わなければ。

たぶん、そういうことなんだと思う。

もちろん、
このまま何も伝えずに、終わることになったら、
後悔するかもしれない、
そんな思いはある。

だって、勇者として、
アスリートとして生きてきた私は、
0か100しか、知らずにきてしまったから。

だけど、その答えを出すのは、
きっと、今すぐじゃなくてもいいんだと思った。






鉛を失くしたい、という私に、

「その鉛がなくなったら、愛ちゃんが愛ちゃんでなくなってしまうけど、いいの?」
と、ジュンコさんは聞く。


それがあるから、
誰かをそんなにも愛せんねんで。

その鉛の大きさは、愛する力の強さやから、
表である愛だけを残すことはできないねん、と。

裏にある鉛がなくなったら、
誰かをそんなに愛することもできなくなんねんで、

観念しい、

と言う。


この鉛がなくなったら、
もっと純粋な愛で、あなたを愛せるような気がしてた。

だって、
この鉛がなくなったら、
あなたにぶつけて、傷つけてしまうこともない。

この鉛がなくなったら、
私は、私を傷つけてしまうこともない。

だけど、
誰かを愛せなくなるなら。

今日の私は、いつもより諦めがはやい。

「じゃあ、失くさなくて、いいです」

私、観念します!笑



もし、こんなにも誰かを愛せなくなってしまうのなら、
私は、少なくとも、今は、
この鉛を捨てられないよ。

だって、嬉しいときも、悲しいときも、
泣けるほど、誰かを愛していたいから。
心が震えるほど、誰かを愛していたいから。

この鉛があるから、
こんなにも誰かを愛せるなら、
私は、寂しいままでいい。


この鉛と、一緒に生きる方法を、
私は見つける。

この鉛を、愛する方法を、
私は見つけるよ。


本当の愛なら、そこに痛みはないって、
根本師匠が言ってた。

でも、今の私にとっては、
愛するって、苦しい。

苦しくて苦しくて、たまらない。

まだまだ、
弟子はそんなレベルの愛しかわかりません。
執着と嫉妬と痛みまみれの愛しか知りません。笑

でも、それが、今の私。

今は、
泣けるほど幸せで、泣けるほど苦しいも、
どちらもある愛し方しかできないけど、
それでも、今、誰かを愛せる私でいたいから。

誰かを愛しながら、
愛されながら、
見つけていくしかない。

今の私がまだ知らない、愛を知っていくしかない。



「私たちは、今できることしかできないんやで」と、
私のモーゼは言った。


今を、生きること。

彼を愛することに必死で、
私は少し、それを忘れていたのかもしれないなと思う。

今、息してる。
今、歩いてる。
今、味わってる。
今、聞こえてる。
今、見えてる。
今、笑ってる。


例えば、あなたに、返事を返さなかったら、
明日も、あなたは私のことを、
思い出さないかもしれない。
明後日も、
思い出さないかもしれない。

私が会いにいかなければ、
もう、会うこともないのかもしれない。

あなた以上に好きになれる人なんて、
この先、出会えないかもしれない。
ずっと、私を愛してくれる人なんて現れないかもしれない。

そうやって、未来の不安を、見つめてきたけど。

あのとき、悲しかった、
あのとき、寂しかった。
あんなこと言うなんて、私のこと、好きじゃないんだ。
あのとき、嫌われてしまったのかもしれない。

そうやって、過去の傷ばかり見つめてきたけど。


今、ここを生きよう。


とても幸せなことに、
今の私には、カウンセリングがあって、
愛したいと思える人と出会うことができる。

私の、生きる理由がある。

未来の不安を生きるとき、
過去の傷をなぞるとき、
私の心は、鉛になる。

だけど、今、目の前のあなたの笑顔を思えば、
この鉛は、愛に変えられる。

目の前のあなたの鉛に想いを重ねるとき、
この鉛は、優しさに変えられる。

鉛を、どうしたらいいのかは、
私も、全然わからない。

どうしたらいいかは、
わからないけど、
私が、大丈夫だよって、言ってあげる。

あなただけじゃないと、伝えたい。

どうして大丈夫なの?と聞かれると、
わからないけど。笑

心が本当に感じるとき、
きっと言葉は後付けでしかない。

だから、どうして大丈夫なのかは、
人生かけて、一緒に探そう?
心が感じることを、
表現できる言葉を、探しに行こう?

鉛を持って生まれた、
私たちの人生は、
きっと、この鉛を愛するための旅だから。

私も、まさに、その旅の真っ最中だから。

ひとりじゃないよ。

あなたが自分ではどうしようもない鉛を
抱えているのなら、
私が愛するよ。

どれだけ、寂しかったか、わかるから。
どれだけ、苦しかったか、わかるから。

どれだけそこに、愛があるか、
誰かを愛して生きてきたか、
痛いほど、感じるから。


寂しくて寂しくて、
もう死ぬかもしれないと思っても、
誰にも愛されないと泣く夜があっても、
私は大好きな人に愛される恋なんてできない、
今、そう思う自分がいても、
どんな鉛を抱えていても、
絶対に幸せになれる。

それを、私自身の人生で、
私に出会ってくれた人の人生で、
ひとつひとつ、証明して、
実現していくこと。

それが、鉛をもって生まれた私が、
カウンセラーという仕事に
こんなにも強く惹かれている理由であり、
私の使命だと、
そう思うから。


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