忘れられない東京タワーと一晩だけの特等席。

私の愛



1年間の大切な恋を、自分の中でおわりにした。


いつもより、大丈夫、だとおもっていた。
自分で、決めたことだから。

だけど、カウンセラー仲間のまみちんが、
前回の私の記事に、
「さみしかったり悲しかったり、
恋が終わった時に1人で抱えなくていいからね!!
彼の好きなところも、
それが好きすぎて苦しかった事も、
何もかも全部、話を聞くよ。」
とメッセージをくれた。

それを見て、
鼻がつんとして、涙が出てきそうになって、気づいた。



あ、私、全然、大丈夫じゃない。



まみちんだったら、私の大好きを、絶対大事にしてくれる。
話を聞いてほしくなって、連絡した。


まみちんは、優しく聞いてくれた。


たくさん頑張ったこと。
好き、という気持ちは伝えられてないから、不完全燃焼ではあること。
彼から返事は来てないこと。
だけど、これまでだったら、できなかったけど、
ちゃんと、私なりに、本音で、ぶつかったこと。
だから、そのことに後悔はないこと。
私が、強くなれたこと。
彼のことがとても大切だったこと。
だからこそ、自分の本当の気持ちを、譲れなかったこと。


私の大切な気持ちを、
一緒に大切にしてくれた。

ただ、私の目の前にいて、
ただ、一緒に感じてもらえるということで、
こんなにも安心する、
そんなこと、わかってたつもりなのに、
最近の私は、素直に頼る、ということから、
少し遠ざかっていたような気がした。


まみちんが泣くから、
何度も引っ込んで、出てこれなかった私の涙が、
ぽろぽろと素直に出てこれるようになった。

まみちんの優しさに包まれて、
それだけで心が、とても癒されたのを
素直に感じられた。




でも。

私が話したいことは、彼のことだけじゃなかった。
もうひとつ、誰かに聞いてほしくて、たまらない話があった。


一晩の夢を見させてくれた人のこと。
とても不思議な夜のこと。



1年間の片思いの終わりの日の、数日前の出来事。



*****



立ちくらみしそうな、夜だった。



私は、片思いの彼ではない男性と、デートをした。



数ヶ月前から、
もう、愛される恋をする、と思い始めていた私は、
外出自粛でデートができない中だったけれど、
マッチングアプリで出会いを探してた。


何人かの人とやりとりをしたけど、
なんだか、どれも続かなくて、
その中で、たった1人だけ、会うという話になった人がいた。



迎えにいきます、と、その人は言った。

私は、助手席に乗せてもらうのが好きなので、
久しぶりにドライブできるのが嬉しくて、お願いします、と言った。



そのデートの前日、私は、外出自粛明け初めて、友達とご飯を食べていた。


そのことを話すと、
「それさ、山奥とか連れてかれたりしないでよ?大丈夫?」
と、半ば冗談まじりに、彼女は言った。


たしかに、2度目ならともかく、
初対面で車に乗るのは危ないのかな、と、
今更ながら、心配になってきた。笑


心配性の私は不安スイッチが入り、
車に乗った瞬間に、
後部座席に隠れていた誰かに睡眠薬を嗅がされて、気づいたら山奥だったらどうしよう、という妄想にかられていた。(コナンの見過ぎである)


その人も、もし車があれなら、
どこかで待ち合わせましょう、
と言ってくれてたし、
だから、やっぱり、車はやめましょう、と、言おうかな。


だけど、大丈夫と思った直感に従ってみることにした。



デートの日。

駅の連絡通路から見える待ち合わせ場所には、車が3台くらい止まっていた。
一番手前に、スポーツカーが見えたけど、まさか、あれではないだろう、と思った。


でも、車の前で待ってます、と言われて、
行ってみると、その、まさかの車の前に、その人は立っていた。



「こんにちは」


見上げるくらいの理想の身長で、マスクから出てる目がすごく綺麗な人が立っていた。


私、今からこの人とデートできるの?
これは何のご褒美だろう?
なんだか信じられなかった。



「お腹空いてる?」

「はいっ!」


そんなやりとりだけして、その人は、車の右に向かった。
私は、左から、乗ろうとした。



「あ、右だから」



左ハンドルのその車で、
その人は、私にドアを開けてくれるために、
右に立ったことがわかった。



デート開始30秒。
すでに、どきどきしすぎて、
外出自粛で怠けていた脈拍がついていけない。
右側に乗るのも初めてだし、
スポーツカーに乗せてもらうのも初めてだし、
車のドアを開けてもらうのも、タクシー以来だった。笑


後部座席から、誰かに睡眠薬を
嗅がされることはないことがわかって(笑)
安心したのも束の間、
今度は、自分の心臓の鼓動に振り落とされそうになる夜が、始まった。



すごくおしゃれな和食屋さんに連れていってくれた。
まだ夕方だったけど、
店内の照明がとても色っぽく感じて、
その人の前に座るだけで、すごくどきどきしてしまった。

車だったから、場所がわからずに、
ここは駅で言うと、どこですか?と聞くと、





「代官山」と返事が返ってきた。








鼻血出るわ。


代官山のおしゃれな和食屋さんに
スポーツカーで連れて行かれるには、
私の鼻の粘膜はあまりに経験不足だった。


そのお店のメニューが、
好きなものばっかりで、私は動揺した。
好き嫌いはあんまりないけど、
これが食べたいっていうのは
明確に決まる方だから、
メニューが端から端まで美味しそう、そんなことは初めてだった。


美味しいご飯に囲まれながら、その人と、話をした。

優しくて、穏やかな人だった。
今まで会ったことないような、
すごく雰囲気のある人。

彼が醸し出す空気感に、
手が届くか届かないかぎりぎりの、
居心地の良い程よい距離感で、
すごく引き込まれていった。


私はうっとりしてた。
うっとりって、
あんまり使ったことがないのだけど、
私はあれ以上うっとりという言葉が当てはまる自分を知らない。


タバコ吸わない、お酒強くない、甘党。
私の嗜好面での好きなタイプ三拍子。
最後の甘党が揃ったときには、
頭の中で、カランカランと鐘の音が鳴り響いていた。



デザートまで食べ終わって、その人は言った。



「お手洗い、行く?」


私が戻ると、その人は、お会計を済ませてくれていた。


それは、私にとって、
ものすごく憧れてたけど、
私にそれをしてくれる人はいないだろうと、
どこかで諦めていたことだった。


私は、
その時点で息の仕方なんか忘れていたし、
ときめきメーターは確実に振り切っていて、
もう正確に動いていなかった。



目の前に、こんなに素敵な人がいて、
今、私は、夢心地のデートをしている。


心臓がもたないですって、悲鳴を上げていた。



その人は、また、車のドアを開けてくれた。



思わず聞いた。
「どうしてそんなに紳士なんですか?」



「え、そう?
普通のことだと思うけど。」
さらりと、その人は言った。


その人のひとつひとつの要素を持っている人は
たしかにいたけど、
その人ほど、
揃っている人には会ったことがなくて、
絶滅危惧種ですか…?と、
聞くわけにもいかず、私は自分の胸に問いかけてみた。


「こんなにレディーファーストされたことないから、本当に、嬉しくて、ドキドキします。」


思ったことを
素直に言うので、精いっぱいだった。






「コーヒー飲む?」



私は、今の話だと思わなくて、
趣味嗜好の話だと思って、
苦いのが苦手なので、甘いやつを飲みます、○○さんは?と聞いた。


すごく好きだ、と言った。




スタバの前に車が止まった。



これを書いている今の冷静な頭で考えれば、
いや、誰があのタイミングで
趣味嗜好の意味で「コーヒー飲む?」って言うねん!
今の話だよ!と、あの時の自分に、盛大にノリツッコミせざるを得ない。




「何がいい?乗ってていいよ」


「え、いいんですか…じゃあ、ホワイトモカ」


「アイス?」


「あ、ホットで」




たしかに、私はいつもそれを頼む。

でも、
夏を目前にした6月の日のドライブで、
なぜ、ホットなんだ、私よ。

今、書いていて、
いかに自分の判断能力が
なくなっていたかよくわかって、
なんだか恥ずかしくなる。笑



スタバに消えていく彼の姿を見ながら、
今、自分の身に起きていることが信じられずにいた。



そして、もう一度走り出した後、
その人が、スポーツカーの屋根を開けてくれた。

目の前で夜空が開けていくその瞬間が、
スローモーションみたいだった。

風の感覚と、どきどきしすぎて体が浮いている感覚。
夜の東京の風を切って、
スポーツカーでドライブしている開放感と高揚感が一気に襲ってきて、今まで味わったことない感覚をどうすればいいか、わからなかった。



「まさか、こんな最高のドライブをさせてもらえると思わなかった、です…」



もう、自分のどきどきで、脳震盪を起こしそうだった。

いてもたってもいられずに、
私が肩をすくめていたら、
「寒い?」と聞いてくれた。


運転してるのに、
そんな変化に気付いてくれるなんて、
この人は、千里眼の持ち主か?


感動して、もう、本当に優しいですねと、言わずにいられなかった。





「東京の夜が一番綺麗だよ」
色んな場所に行ったけど、と、その人は言った。



東京タワーを、真下から、見上げながら、通り過ぎた。
表参道ヒルズも通った。
風を感じながら見る東京の夜景は、
刺激が強すぎて、でも、すごく優しいのが不思議だった。


この感動をその人に伝えたくて、言葉にしたいけど、全然できなかった。

「私、今、最高に素敵すぎて、語彙力がなくなってます」



「最高すぎて、一生乗ってたいです」

「絶対疲れるよ」



東京は、こんなに綺麗だったんだな、と私は心から思った。
夜の風が私の顔を包んでいなかったら、
体が熱くなりすぎて、爆発してたと思う。



家の近くの駅まで、送ってもらった。



「終わっちゃうのがさみしいです」
本当に思った。


「またあるよ」と、その人は言った。



颯爽と去るその姿を見送って、私は家まで歩いた。
体がまだ空を飛んでるみたいで、夢だったのかな?って、自分に聞きながら歩いた。
いや、ほぼ飛んでたかもしれない。



家について時計を見たら、会っていたのは、たった3時間だったらしい。
でも、ときめきメーターだけじゃなくて、
時間感覚もぶっ壊れてて、
3時間というのが信じられなかった。



東京に来て10年とちょっと。
いろんな夜を過ごしてきたけど、
これまでで一番ふわふわした東京の夜に包まれて、私は夢を見た。

その夜も、その人も、素敵すぎて、あまりにも現実味がなかった。

だけど、あのときの東京タワーと夜の風の感触を、私はずっと忘れないと思う。




*****





そんな夜の話。



その夜の夢みたいなデートがあったから、
私は、最後の決意が決まったようなもの。

夢を見て、目が覚めた。

私は、もう、こういう恋をするって。

その人との出会いで、
1年の片思いの彼への気持ちを
終わりにすることを、
新しい恋に踏み出すことを、応援してもらえた気がしてた。






だけど。







だけど、その人とも、恋は始まらなかった。







また会いたくて、
私から誘ったのだけど、
たぶん、遠回しに、断られてしまった。


「私、あの夜のこと、
夢だったのかなって思ってて、
次またできたら、夢じゃなかったって、思える気がします」

そう言った私を、傷つけないように、遠回しに。



夢だったのかな?とおんなじように、
これは、だめってことだよね?と、自分に聞いた。


何がいけなかったのか、わからなかった。
でも、何かが、きっとその人にとって違ったんだろうな。
そう思って、自分を納得させるしかなかった。




夢のような夜は、本当に、一晩の夢で終わってしまったみたい。



遠回しに断られてしまったのは、
1年の恋に区切りをつけた日の数日後。




私は、たった数日間の間に、恋を二つも失った。

さすがの私も、そんな短期間で二つ失ったことはない。笑



だから、まみちんに、
ダブルパンチで、落ち込んでいること。
なんで、こんなに上手くいかないんだろうと思ったこと。
どうせ愛されないんだなあ、とまた弱気になったこと。


1年の恋の終わりの衝撃と比べたら、
そりゃ小さいけれど、
とにかく、私はなんでこうなんだろう、と、話した。



でも、まみちんにそのあと言われたことで、
さらに、涙腺まで壊れることになるとは、思わなかった。




私は、その人には、
なんだか不思議な縁を感じてた、と話した。



なぜなら、お父さんと名前が同じ。笑


そして、アプリのプロフィールによると、
もうひとつ、お父さんとの共通点があった。



だから、どういうわけか、
不思議な安心感があって、
この人なら大丈夫な気がして、
私は山奥へ連れて行かれるリスクを背負って、
彼の車に乗ることを選んだ。笑


私、どこまで、
お父さんが好きなんだろう、
助けたいんだろう、と、泣きながら笑って話した。


そしたら、まみちんが、
なんかぞわぞわした〜と両腕をさすりながら、



「それって、リハビリくんじゃない?
だから、愛ちゃんにその理想のデートを見せてくれたから、役目が終わったのかもよ?」


そして、



「聞いてて思ったんだけど、それって、お父さんが、愛ちゃんを、助けに来たのかもしれないよ」



そうやって、愛されていいんだよ、
そうやって、大切にされていいんだよ、って、
教えに来てくれたのかもしれないよ、って。



大事な愛のことを、
助けに行ってあげてって、
お父さんが、連れて来てくれた人なのかもしれないよって。



そっか。


そっか、と思うと同時に、
声にならずに、涙のダムが決壊した。



お父さん、きてくれたの?



そっか。
お父さん、きてくれたんだ。



これまで、娘が
「お父様。しばらくは、結婚できそうにありません、ごめんなさい。」と冗談3割本気7割で言っても、笑ってたお父さん。

思う存分好きな男を追いかけるよ、
という謎の決意表明をする
結婚適齢期の娘に、
おう、がんばんな、と、笑ってたお父さん。

田舎で生きてきた感覚では、
到底理解なんかできないだろうけど、
東京で奔放に暮らす一人娘の人生に、
何も口を挟まずに、いつも見守ってくれるお父さん。


その、お父さんが、
ついに、娘を見かねて、やってきた。
同じ名前で、颯爽と、わかりやすく、やってきた。
そして、颯爽と、去っていった。笑 



でも、それなら、
一回だけの夢じゃなくてもいいのに。
せめてあと1回、夢見たかったのに。
数日間の超過密スケジュールの間に、
2回も失恋を詰め込んでくれなくてもいいのに。
お父さん、タイミングがいいんだか悪いんだか、わからないよ。笑


「たぶん、お父さん、不器用で、とりあえず、一回だけでいいから行ってきてって、お願いしたんじゃない?笑」って、まみちんが言って、


ほんとに、シャイで、不器用な私のお父さんじゃないか!と思って、笑った。


だから、あんなに、
現実味がなくて、
夢見心地だったのかなって思ったら、
やけにしっくりきて、私は、大きな大きな愛に包まれて、泣けてしまった。




本当に、素敵で、夢みたいだった。
全部、私の理想で、私が想像できる範囲を超えた最高に素敵なデート。
あんな夢みたいなデートを、私、してもいいんだ。
空飛んでるみたいなふわふわとした夜。
その日は、目が冴えすぎて、全然眠れなかった。


あんな恋を、夢見てもいいんだ。


ドラマと少女漫画のいいところを
全部詰め込んだみたいなデートを、
日々の鍛錬による妄想耐性の高い私でさえ
脳震盪を起こしそうなデートを、
これは現実ですか?って聞きたくなるほど、
夢を次々と叶えてもらえる幸せなデートを、
私、望んでもいいんだ。
私にはそんなの叶えてもらえないって
諦めてたデートを、叶えてくれる人がいるんだ。



こういう素敵な人と、
こんなにも素敵なデートができる恋を、
私、してもいいんだ。




そう思ったら、泣けて泣けて仕方なかった。
今朝起きても泣いて、
書いてる今も泣けてきて、
何度泣いても止まらなくて、昨日から困ってる。
その人は、何もかも、
ときめきメーターも、
時間感覚も、
デートの概念も、
夢を見ることへの諦めも、
涙腺まで、一夜にして、壊していってしまった。




お父さん。

わたしのことを、お母さんの分まで、
たくさん愛してくれたお父さん。
間違いなく、私のことを誰よりも大切に思ってくれている男性。
大好きなお父さん。


いいんだよ、愛されていいんだよっていう、
まみちんの声に重なって、
お父さんの声がしてるみたいだった。




いいんだよ。



愛。
幸せになっていいんだよ。
愛されていいんだよ。
大切にされていいんだよ。



愛には、そういうのが似合ってるよ、って、
そうやって、お父さんが笑ってる気がして、
私、泣きじゃくった。


ああ。



私に夢を見させてくれたその人に、
何度も言ったけど、
もっと、ありがとうって言えばよかったな。
あんなに素敵な夜を、私にくれて、本当にどうもありがとう。
次の約束ができなかったことが悲しくて、
私の何がいけなかったんだろうって、
いじけてたけど、心の底から、ありがとうの気持ちが湧いてきた。



その人にも、絶対に、幸せになってほしいと思った。
きっと、それはそれは素敵な女性が、
その人に出会うのを、彼と幸せになるのを待ってるんだろうな、と思った。

本当に、とっても素敵な人だったから。




◯◯さん。
一晩だけ、助手席、お借りしました。
あなたのとなりは、夢を見るには、最高の特等席でした。
何度言っても足りないくらい、
本当に、ありがとう。



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